• Hideya Tanaka

Issue 156 - コネクテッドTVによる視聴の増加とRoku

今回のシアトルウォッチでは、「Future of Streaming: The Convergence of OTA and OTT」というタイトルのWebrain Reportの一部をご紹介していきます。後編の今回は、その中からCTV(コネクテッドTV)による視聴の増加とCTVプラットフォーマーの代表格であるRokuについて話していきます。

 

最近ネットワークに接続されたCTV(コネクテッドTV)で動画コンテンツを視聴する人が増えています。もちろんモバイル端末で視聴する人も増加していますが、重要な点はモバイル端末よりもCTVで視聴する時間の方が長い傾向にあることです。Nielsenの調査では、(TV番組や映画の)1日の平均視聴時間はCTVが1時間20分、モバイルが22分と報告されています。 https://nscreenmedia.com/mobile-viewing-matters-despite-ctv/


大きなスクリーンのCTVでコンテンツを見ることは、「リーンバック」(ソファーの背もたれに寄りかかりくつろいだ状態での視聴体験)とも呼ばれており、その一方で小さいスクリーンのモバイルやPCでの視聴は「リーンフォワード」(前に傾いた姿勢での視聴体験)と呼ばれています。 https://digitalcontentnext.org/blog/2019/05/06/to-maximize-ott-performance-should-we-think-lean-back-or-lean-forward/


米国放送業界アナリストのテッド若山氏は、CTVでのリーンバック視聴が普及した結果、大きなスクリーンで長編コンテンツを視聴することが増え、ストリーミング動画でも従来のテレビ放送と同様の広告が使えるようになり、前編で紹介した広告型動画配信のAVODやFASTと呼ばれるサービスの拡大につながっていると分析しています。 http://www.newww-media.co.jp/backnumber/202112/202112p18.pdf


実際、Omdiaの調査によると、無料のAVODを利用するユーザーの3分の2近くがテレビ画面からアクセスしています。そして、広告型動画配信プラットフォームの広告費のうち、大部分を占めるのがCTVでの売上と言われており、eMarketerが2021年に発表した予測では、2022年にCTVの広告費は136億2000万ドルまで達する見込みです。 https://omdia.tech.informa.com/pr/2021-feb/svod-has-paved-the-way-for-avod-growth-globally

https://www.businessinsider.jp/post-232207


こうしたCTVが普及するなかで、最近改めて注目されている企業の1つがRokuです。同社はCTVのストリーミングプラットフォーマーと呼べる存在で、ハードウェア事業とプラットフォーム事業の2つの事業を展開しています。ハードウェア事業は、Roku PremiereやRoku ExpressといったTVストリーミング端末(テレビに外付けするとインターネットに接続でき、ストリーミング視聴ができる)を極めて低いマージン率で販売して多くの家庭に普及させてきました。


後者のプラットフォーム事業は、RokuのCTVのOS上でYouTubeやTubiなどのパートナー企業のストリーミングサービスを視聴できるサービスと、自社独自のAVODサービスであるRoku Channelの2つに大きく分かれており、パートナー企業のAVODサービス上の広告在庫の一部や、自社AVODサービス上で再生される動画に挿入される広告収入などによって成り立っています。


つまり、Rokuは大量のCTVのデバイスを低価格で配布して、パートナー企業のストリーミングサービスへの窓口になることで、アクティブユーザーを獲得し、そのアクティブユーザーをベースにして広告によって長期的に収益を得るという仕組みを作り上げているのです。同社のアクティブアカウントユーザーは、2022年の第1四半期で6,130万ユーザー(前年同期比14%増)に到達し、ハードウェア事業で8,680万ドル、プラットフォーム事業(大半は広告収入)を通じて約6億4,700万ドルの収益を稼ぎ出しています。 https://variety.com/2022/digital/news/roku-q1-2022-streaming-slowdown-1235243519/


Rokuの強みは、デバイスによって顧客との接点を抑えるというプラットフォーマーとしての立場を確立しただけではなく、よりパーソナライズ可能な広告挿入技術を抑えてきていることです。近年では、広告プラットフォームのDataxuやNielsenのテレビ広告部門を買収して強化をしています。 https://www.adexchanger.com/digital-tv/roku-acquires-advanced-video-ad-tech-from-nielsen-and-nielsen-expands-access-to-roku-audiences/


前回紹介したNetflixが最近大きな失速をしたように、Rokuも影響を受けている部分はありますが、カナダのWalmartとの提携発表やアウトドア用CTVの発表など、ここ数日父の日に向けた攻勢もかけています。RokuがもともとNetflix社内で「Project Griffin」というコード名のセットトップボックス事業からスピンオフした会社という歴史を踏まえると興味深い流れとも言えます。


Rokuの創設者でありCEOのAnthony Wood氏は、CNBCのインタビューで「Rokuは、インターネット世界におけるコンテンツのディストリビューションプラットフォームである。」と説明し、同社が成功した要因として、モバイルネイティブのOSであるApple TVやAndroid TVなどの競合と戦うために、Purpose built for Televisionという目標を掲げて、モバイルでなくCTVに特化したことだと述べています。 https://www.youtube.com/watch?v=v6NYUYb4DBk


この同氏の戦略はOSをめぐる過去のパターンに基づいています。というのも、メインフレームのOS(IBM)は、PCのOS(Windows)にはなれず、PCのOSは、スマホのOS(iOSやAndroid OS)にはなれなかったというこれまでの歴史的な流れを踏まえて、スマホのOSもCTVのOSになれないと予見していたのです。


過去のパターンから市場のどこに自らの立場を置くべきかを見極める重要さは、どの業界においても共通している重要事項です。しかしその後のビジネスの成功には、過去から未来への時間的な変化と流れを汲み取る視点、つまりそのタイミングをかぎ分けるインテリジェンスを磨くことがより重要であるとこの業界の早い動きを見ていて改めて認識した今日この頃です。今後の皆さまの新規事業を考える際のヒントとなれば幸いです。



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