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Issue 137 - Human and Robot Symbiosis Part 2

今回は、「Human and Robot Symbiosis:人間とロボットの共生」というタイトルのレポートの2回目の紹介になります。前回は様々な分野で活躍するロボットと、それをRaaS(サービス)として提供する新しいビジネスモデルについて紹介しました。今回紹介するのは、コボット(協働ロボット)と呼ばれる新しいタイプの業務用ロボットです。

 

これまで業務用のロボットと言えば、大がかりなシステムを業務に合わせてデザインし、システム構築から時間とお金を掛けて行うというイメージが強かったですが、コボット(協働ロボット)と呼ばれる小型で安全で使いやすく、様々なタスクに柔軟に対応できるロボットが、幅広い産業で使われ始めています。


ドイツにあるフォードの組み立て工場では、すでに2017年からKUKAが開発した軽量のコボットを組み立て工程に導入しています。この工場の労働者は、KUKAのコボットを「同僚」と呼び、様々な作業を共同で処理しているのです。

https://www.kuka.com/en-us/industries/solutions-database/2019/05/body-in-white-production-ford-lbriiwa_sys


ここで私が注目したのが、人間と一緒に働くというアプローチです。Webrainでは長年に渡ってスマートなオートメーションについて数多くのレポートを制作してきました。その中には生産性を高めるために人間の介在を出来るだけ減らすことを論じた記事が数多くありました。なぜなら人間はミスをする生き物だからです。その結果、多くの生産現場で人間を排除した自動化が進み、24時間体制で製品の組み立てが可能になり、完全に自動化された生産工場が生まれています。


こういった製造業だけでなく、様々な分野で自動化は進み、株取引や空港でのチェックイン、コンビニでの決済などにAIが導入され自動化が加速しています。そしてこのようなオートメーション技術の導入の裏で、近い将来姿を消す職種が議論され、さらにベーシックインカムを含めた将来の人間の労働のあり方も真剣に議論されるようになってきました。


しかし、このような急激な自動化の流れに一石を投じているのが、今回のレポートで大きく取り上げたメリーランド大学のコンピューター科学者のBen Shneiderman氏です。同博士は、この分野での技術革新が人間を介在することなく完全自動でタスクを処理すること目指すアプローチに偏り過ぎていると警鐘を鳴らしています。


ニューヨーク・タイムズ紙の記事の中でShneiderman博士は、昨今の自動運転技術が、完全な自動化によって人間自身を運転というタスクから排除するという方向に傾き過ぎていることを危惧しており、2018年秋と2019年春に相次いで起こったボーイングの新型ジェット機である737MAXの墜落事故も、高度に自動化され人間に低い制御能力しか与えなかったシステムが起こした事故だと分析をしています。

https://www.nytimes.com/2020/05/21/technology/ben-shneiderman-automation-humans.html


そこで同博士は、マシンに人間が振り回されるシステム開発ではなく、どんなにマシンが賢くなってもその中心には人間が存在するシステム開発が重要だとして、そのアプローチをHuman-centered Artificial Intelligence (HCAI)と定義しているのです。「協働ロボット」と非常に巧く日本語に訳されているコボットは、Shneiderman博士のHCAIのアプローチに沿うものだと私は考え、今回のレポートで同博士の考え方を紹介しました。

https://core.ac.uk/download/pdf/351022372.pdf


皆さんは、「手段と目的の履き違え」という言葉を耳にしたことはありませんか?忙しい日常業務に追われていると、毎日のタスクを終わらせることが目的になり、何のためのタスクだったかを忘れることがないでしょうか?会議をすることや会社に行くことがその目的になっていることが起きていませんか?


私は今回のレポートを通じて、どんなに素晴らしいAIやロボットも、最終的には人間の生活を豊かにするために開発された手段(道具)に過ぎないことを再認識しました。悲惨な事故を無くすことは大切ですが、人間が働かなくても良い世界を目指すことはAIやロボット開発の目的なのでしょうか?


より自然な人間とロボットの共生のあり方を考える中で、「切磋琢磨」という言葉が浮かびました。豊かな生活を実現するために、AIやロボットが人間と一緒になって「切磋琢磨」し、様々な課題を克服するようなアプローチが今後ますます求められてくるのではないかと思います。


 

<コボットを開発するプレーヤー>

KUKA Robotics (http://www.kuka.com/en-us)

KUKA Roboticsでは、様々な可搬重量とアームリーチに対応したモジュール式の産業ロボットを製造している。同社の製品は3kgから1,000kgの荷重に対応し、ロボットアームのリーチ範囲は500mmから4500mmまで及ぶ。PCベースのソフトウェアは、オープンアーキテクチャーになっており、既存の自動化システムと統合することができる。さらにKUKAでは、自社ロボットの取り扱いに関する研修やトレーニングを目的としたKUKA Collegeを世界の6大陸で展開し、自動車メーカー、電子機器メーカー、ヘルスケア関連の顧客にサービスを提供している。

ABB (https://global.abb/group/en)

ABBは130年の歴史を持つグローバルテクノロジー企業で、産業用ロボットとそのソフトウェア、周辺機器およびアプリケーションを100カ国以上に提供している。各産業に特化した統合型のオートメーションソリューションには、安全柵なしでも安全に機能するように設計されたYuMiと呼ばれる双腕型のコボット(協働ロボット)が含まれており、怪我のリスクが少ない環境で人間がロボットと協働できる環境を実現している。同製品は、短いサイクルで高度にカスタマイズされた製品を小ロットで作る必要がある組立工程に柔軟性を加えることができる。

AUBO Robotics (https://aubo-robotics.com)

AUBO Roboticsは、中小規模の製造業向けのコボット(協働ロボット)を製造している。限られた作業環境で人間と緊密に連携するために設計されたAUBOロボットは、一般的な110VACから230VACの壁コンセントの電源で使用可能で、ユーザーフレンドリーで柔軟性があり、低コストで、さらに移動や再配置が容易である。また設置面積が小さいため、床面積が限られている環境での活用に有利である。手動のデモンストレーションによってロボットに操作を覚えさせることができるため、プログラミングのスキルは不要であり、高度にカスタマイズされた製品や短期間しか製造しない製品の製造に適している。








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