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Issue 124: Edible Intelligence: Data-driven AgriFood Revolution - Part 2

今回のSeattle Watchは、Edible Intelligence: Data-driven AgriFood Revolutionというレポートの2回目の紹介になります。世界的に食糧問題が議論される中で、AgriFoodと呼ばれる領域のスタートアップ企業は、データを駆使してより効率的な食料生産を実現しようと取り組んでいます。持続可能な開発目標(SDGs)を行動の規範として掲げる企業が増える中で、農業技術(AgTech)と食品技術(FoodTech)の世界が融合し、新たなビジネスチャンスが広がろうとしています。


 

第4次産業革命(インダストリー4.0)が進展する中、プロセスの継続的な自動化は製造業を中心として多くの企業に影響を与えています。これと同じことが、私たちの食料生産にも起こっていることをご存じでしょうか?この動きは第4農業革命とも呼ばれています。現在、作物の栽培や家畜の飼育に必要な土地の面積は世界で縮小を続けています。その中で増え続ける人口への対応、そして栄養価の高い食料の供給を確実に行う必要性からこの動きが起きているのです。

農業ビジネスを行うBungeの元会長兼CEOでTemasek Americas Advisory Panel(投資会社のTemasekが組織する有識者委員会)のメンバーでもあるAlberto Weisser氏は、いま我々は第4次農業革命の始まりにいると話しています。第1次農業革命は今から1万2,000年前から4,000年前にさかのぼり、人類が狩猟採集から農耕生活に変化したことで、定住して共同体を築くことができるようになりました。次に約4世紀前の第2次農業革命では、新しい耕作機の開発や家畜の品種改良が行われ、生産性が大幅に向上しました。そして、第3次農業革命が約70年前に始まり、高収量品種の開発や化学肥料、灌漑などの水の供給管理、その他の機械化など、科学に基づいた新しいアプローチが導入されました。

この第4次農業革命は、マイクロバイオーム(微生物叢)、精密農業、遺伝子編集、代替タンパク質という4つの技術分野によって支えられています。それぞれ科学的に見て重要な成果を生み出してきていますが、第4次産業革命との比較で語られるのは、おそらく精密農業の分野でしょう。農業分野であれ産業分野であれ、データの収集、分析、応用によって新しいプロセス、つまり生産性の向上や工業化が進化しようとしているのです。 https://qz.com/1665188/tech-will-fix-our-future-food-crisis/

例えばイスラエルのSeeTreeは、果樹園の様々なデータを収集することができるセンサーを搭載したドローンを開発しています。同社の機械学習アルゴリズムでは、収集したデータに基づいて特定の木の病気の初期兆候を検出することができ、生産者は即座に果樹園の残地の部分を守るために対策を講じることができるのです。またConnecterraは、同様の技術を用いたIdaと呼ばれる製品を牧場経営者向けに提供しています。この製品のAIは、牛に装着したセンサーから収集したデータを分析することで、牛の健康状態を継続的に監視し、牧場主に対して病気の早期発見と予防のための通知を行います。既に収穫された食糧でさえも、この新しい農業インテリジェンスの恩恵を受けることができます。Centaur Analyticsは、既に収穫した穀物サイロ内の腐敗や害虫を監視するセンサーシステムを開発しており、収穫物全体の廃棄を防ぐために、可能性のある問題の特定に役立っています。

多くの工場環境では、投入資材の品質、機械の精度、さらには温度や湿度などの環境要因など、すべての変数を制御することで効率化がなされています。しかし、農家は天候や害虫の発生などの不確実性の高い要因に影響を受けており、自然発生する現象をコントロールすることは望めないのです。これが、工場と農場で起きている革命における非常に大きな違いと言えるでしょう。

両者とも、より安くより速いオペレーションによって、新たなレベルの効率化を実現しようと努力していますが、それぞれ異なるアプローチをとる必要があります。工場ではすべてのカオスを制御することで完璧を目指す一方で、農場はカオスと共存するためにリソースを使用しなければならないのです。幸いなことに、AgriFoodTech(農業技術(AgTech)と食品技術(FoodTech)が融合した分野)におけるデータ指向のソリューションは、農家が混沌(カオス)とした環境に適応し共存するための武器を与えてくれるでしょう。


 

<データ指向のAgriFoodTech分野のプレーヤー>

SeeTree (https://www.seetree.ai/) SeeTreeは、ドローンで空撮されたデータを機械学習アルゴリズムで分析することで、果樹園の木を個別に管理することを支援している。農家は、これらのデータを利用することで、様々な要素から木の健康状態を判断したり、果実の大きさや木の発育段階に基づいて収穫を計画することができる。また、これらのデータを果樹園の灌漑や施肥のインフラと紐づけることで、農場のROIを算出することも可能である。 Connecterra (https://www.connecterra.io/) Connecterraは、乳牛の首輪に装着するセンサーを活用したIdaと呼ばれるスマート酪農アシスタントを提供している。同製品は、収集した乳牛の行動に関するデータをAIによって分析することで、牛の健康や繁殖力、農場の生産性を高める主要な要素などを含む農場の効率化について予測分析や実行可能なレコメンデーションを提供する。行動データには、摂食、反芻、歩行、起立、横たわり、咀嚼回数、睡眠が含まれる。 Centaur Analytics (https://centaur.ag/) Centaurは、Internet-of-Crops Platformと呼ばれる収穫後の作物をモニタリングする製品を提供することで、廃棄物の削減と食品の安全性の向上を目指している。このプラットフォームは、穀物、小麦粉、その他の高価な作物に対して予測分析とサプライチェーン品質マネジメントを活用している。作物の貯蔵庫などに設置されるセンサーを通じて、温度、水分、二酸化炭素などのデータが取得され、管理者は、それを環境情報や予測モデルと組み合わせることで、保管されている作物の品質を保つためにさまざまな調整を行うことができる。

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