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Issue 111: Era of Hyper-personalized Media Delivery - Part 1

今回は、Era of Hyper-personalized Media Deliveryというレポートの1回目の紹介になります。DtoCの波が米国のメディアの世界にも押し寄せ、市場を作り変えています。今後、この波は他の産業にも大きな影響を与えるかもしれません。

 

ダイレクト・トゥ・コンシューマー(DtoC)という言葉を耳にしたことがあると思いますが、これはメーカーやブランドが自社で企画・製造した商品を仲介業者などを介さずに自社のサイトから直接(ダイレクトに)消費者(コンシューマー)に販売するという仕組みのことです。有名なDtoC企業には、眼鏡ブランドのWarby ParkerやマットレスメーカーのCasperなどが挙げられます。より直接的に顧客のCX(顧客体験)を高めるために、様々なメーカーがDtoCに参入しており、仲介業者の存在意義が問われています。 このような消費者への直接販売の波は米国のメディアの世界にも押し寄せています。つまり、メディア企業はこれまでのようにサードパーティー企業(ケーブル事業者など)を経由してコンテンツを配信するのではなく、視聴者との直接的な接点の構築を目指しているのです。AT&Tの会⾧でCEOのRandall Stephenson氏は、「これからのメディア企業はダイレクト・トゥ・コンシューマー(DtoC)の関係を強化する必要がある。メディア企業にとって純粋な卸売りモデルは長期的な(ビジネスの)持続が非常に困難になってきている。」と述べています。また、Netflixのコンテンツ主任であるTed Sarandos氏も、「これまでの有料TVのビジネスはBtoBモデルであったが、我々(BtoCモデル)にとっての顧客は常にエンドユーザーであり、もし彼らの希望を満たさなければ、クリックひとつで契約を解除されるという危機感と戦ってきた。」と述べています。 https://variety.com/2018/digital/features/media-streaming-services-netflix-disney-comcast-att-1202910463/ 今回のレポートでは、新しいDtoCのメディアビジネスの台頭について紹介しています。今年6月に日本に上陸したDisney+もDtoCモデルの1つです。このサービスでは、広告を伴わないコンテンツ配信手法を採用し、米国ではNetflixの最も安い購読プランよりも2ドル安い6.99ドルに値段が設定されています。また、AT&Tが所有しているWarnerMediaも、今年の5月から米国で新たな動画配信サービスであるHBO Maxを月額14.99ドルで開始しました。その他、短編動画配信が特徴的なQuibi、アメコミのデジタル配信サービスのDC Universe、そして米国の4大ネットワーク局のひとつであるCBSのネット動画配信であるCBS All Accessなども、DtoCモデルを採っています。 CBSの前CEOであるJoe Ianniello氏は、「ビジネスモデルの観点からもこの手法(DtoCモデル)は聖杯(Holy Grail)である。我々にとって最も利益率の高い消費者はCBS All Accessの購読者である。これらの消費者はコンテンツをどこでもワンクリックで楽しむことを望み、それに対価を払うことを当たり前と考えている。」と述べています。 https://variety.com/2018/digital/features/media-streaming-services-netflix-disney-comcast-att-1202910463/ 言い換えると、デジタル化によって消費者のニーズを直接反映したようなコンテンツ制作が不可欠な時代を迎えていると言えるでしょう。これまでコンテンツの配信業者として成長してきたNetflixやAmazon Prime Videoなどが巨額の資金を投じてオリジナルコンテンツの制作を手掛けるのも、このDtoCモデルの台頭が背景にあります。これからは提携関係にあったDisneyやCBSやHBOと競合することになるのです。 日本でもテレビ番組の再視聴をオンラインで可能にするサービスが多く登場していますが、これらもコンテンツのDtoCでの販売モデルと言えるでしょう。これまでのビジネスでは販路を持っている会社が大きな力を持ってきましたが、これからは消費者のニーズに合った商品やコンテンツについて、直接消費者と対話し企画・開発できる企業が勝ち残っていくと思われます。すでに日本のメディア産業でもNetflixの参入によって優秀なディレクターやクリエーターの争奪戦が始まっています。 https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/bizjournal/business/bizjournal-bj-143175 ブランド企業やメディア産業だけでなく、これまでの伝統的なアプローチをとってきた企業は、今後ますます淘汰されていく可能性が高くなってきているのではないでしょうか。

 

<DtoCストリーミングサービスプロバイダー> Quibi (https://www.quibi.com) Quibiは、2020年の4月から提供が開始されている月額5ドルの短編動画配信サービスである。同サービスは「quick bites」と呼ばれるプログラムにフォーカスし、人気テレビ番組や映画を6分から10分の短い時間に分割したコンテンツに編集することで、普段からスマホで短い動画を見ているユーザーをターゲットにしている。Quibiは、DreamWorks Animationの元CEOであるJeffrey Katzenberg氏と、Hewlett Packardの元CEOであるMeg Whitman氏によって設立されている。両氏は、平均的なユーザーが1日に70分ほど短編動画を視聴する中で、20分の視聴時間を獲得することを目指している。Pandoraの共同制作者であるTom Conrad氏もQuibiに参画している。(メモ:3ヶ月のトライアル終了後、90%のユーザーが継続しなかったとのニュースあり。) https://www.slashfilm.com/quibi-subscriber-numbers-90-percent-drop/ DC Universe (https://www.dcuniverse.com) DC Universeは、Warner Bros.(AT&T’s WarnerMediaの一部門) が所有しているDCコミックのキャラクターを取り上げたストリーミングサービスである。同サービスは、ゲーム、オリジナルのテレビ番組、Warner Bros.の映画やテレビ番組、またSupermanやBatmanなどの初期のコミック本を含めた幅広いコミック本も提供している。ユーザーはDCに関連した商品をオンラインで購入したり、DCコミックのキャラクターをテーマとしたチャットルームに参加することもできる。同サービスは、iOS、Android、Roku、Apple TV、Android TV、Amazon Fire TV、Xbox Oneなどのプラットフォームを通じて月額7.99ドルか年額74.99ドルで利用できる。 CBS All Access (https://www.cbs.com/all-access) CBC は、独自の新しいストリーミングコンテンツと1 万本ものテレビ番組を組み合わせることで、CBC All Access の視聴者にあらゆるデバイスを通じてオンデマンドのエンターテインメントを提供している。CBC All Access が配信するオリジナル番組には、Star Trek: Discovery、The Twilight Zone、Strange Angel などの人気番組が含まれている。また視聴者は、地元のNFL(プロフットボール)の試合をリアルタイムで視聴することもできる。同サービスは、1 週間の無料トライアルの後に広告ありタイプ(月額5.99 ドル)か広告なしタイプ(月額9.99 ドル)を選択することができる。

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