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Hideya Tanaka

Issue 153 - The Augmented Worker: Wearable Robotics Part 2

今回のシアトルウォッチは、「The Augmented Worker: Wearable Robotics」というタイトルのWebrain Reportの概要紹介の続きになります。後編にあたる今回は、エクソスケルトン(外骨格デバイス)の将来像について見ていきます。産業用だけでなく、一般消費者向けのエクソスケルトンも開発が進められていますが、本当に普及するかどうかは、技術、ビジネスモデル、そしてニーズなど幅広い視点から注視していく必要がありそうです。

 

前回のシアトルウォッチで紹介したように、エクソスケルトン(外骨格デバイス)は医療や軍事、産業向けに開発されることが多いですが、最近では一般消費者向けの製品も登場してきています。例えば、Enhanced Roboticsが開発しているSPORTSMATE 5という軽量な外骨格デバイスは、アスリートやスポーツを楽しむ人をターゲットに開発されており、着用者の疲労を軽減することでより速く長く走れるように補助したり、運動の効果を高めるためにあえて負荷を高めるといった機能を備えています。 https://wired.jp/2022/01/21/sportsmate-5-fitness-exoskeleton/


同様に、Roam Roboticsでも、歩く、膝をつく、椅子に座る、立ち上がる、段差を昇り降りするなどの日常の動作や、ハイキングやガーデニングなどの作業を補助するAscendと呼ばれる外骨格デバイスを開発しており、人々のモビリティを改善することを通じてより健康的な生活への支援をしています。


また、スタンフォード大学のバイオメカトロニクス研究所では、足首に装着する外骨格システムを開発しており、歩行速度を通常よりも約40%向上させることに成功しています。同研究所のディレクターであるSteven Collins准教授は、将来的には高齢者の歩行速度を回復させることで、よりストレスのない自立的な生活を送ることを支援したいと述べています。 https://news.stanford.edu/2021/04/22/ankle-exoskeleton-enables-faster-walking/


では、これらの消費者向けのエクソスケルトン(外骨格デバイス)は今後普及していくのでしょうか?そこで参考になるのは、電動立ち乗り二輪車のセグウェイかもしれません。2001年に登場したセグウェイは走行する際の加減速を、乗る人の体重移動で行う画期的な製品で、未来のモビリティとして大きな話題を呼びました。しかしセグウェイの普及は奮わず、2020年7月に生産終了を迎えています。


セグウェイの普及を妨げた原因について、日本の場合は道交法の規制によって公道を走行することが出来なかったことが大きな理由と言われていますが、モビリティジャーナリストの森口将之氏は他の理由として価格の高さを挙げています。セグウェイは1台100万円前後とかなり高価で、一般の消費者からするとより多くの人と荷物を載せられる軽自動車やもっと安価な自転車を購入する方が合理的な判断となり、また、セグウェイの操縦は慣れるまでコツが要るためユニバーサルな乗り物とは言えず、シニアや障がい者へと市場を広げられなかったことも大きな要因になったのではないかと語っています。


その一方で、1台数万円から購入できて操作も簡単な電動キックボードは市場を拡大させており、最近は国内でも公道走行における規制緩和が進められています。このセグウェイと電動キックボードの事例から見ると、エクソスケルトンの場合でも価格戦略とユニバーサルなデザインは、普及に向けた重要な要素になるのではないでしょうか。 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74038?imp=0


ちなみに、先ほど紹介したパワードスーツのSPORTSMATE 5ですが、Kickstarterでの販売価格は1台約10万円で、消費者の手が届きやすい価格までもう少しといったところです。しかしユニバーサルなデザインという観点では、近未来的なガジェットを身にまとって外出することの恥ずかしさや人々の視線が気になるという点が課題として残っていると指摘する声もあります。 https://wired.jp/2022/01/21/sportsmate-5-fitness-exoskeleton/


デザイン思考の観点から見ると本当に成功する製品やサービスには、実現可能性としての技術、持続可能性としてのビジネスモデル、そして有用性としてのニーズの3つの要素が必要であると言われています。消費者向けのエクソスケルトンが今後市場に受け入れられ、本当のイノベーションと呼べるものになっていくかどうか、自らの目利き力への挑戦として、こういった商品の動向を自ら追いかけてみると面白いのではないでしょうか? https://bizzine.jp/article/detail/93?p=5

 

<消費者向けのエクソスケルトンを開発する企業>

Roam Roboticsは、世界人口の20%を占める運動機能障がいを抱える人が日常的に使用できる軽量で安価な外骨格デバイスを開発し、家電製品の新カテゴリーを開拓することを目指している。Ascendは、高精度の機械システムを活用し、歩く、膝をつく、椅子に座る、椅子から立ち上がる、階段の上り下りなどの日常生活や一般的な動作を補助することが可能で、大腿四頭筋と膝にかかる負担を軽減する。

Enhanced Robotics (https://www.xenhanced.com/)

Enhanced Roboticsが開発したSportsmate 5は、AIを使って着用者の歩行やその傾向を学習して、調整しながら適切な歩行補助を行ってくれる外骨格デバイスである。重さ2.5kgのデバイスは、1回の充電で6.5マイル(10キロ)歩くことができ、身体負荷を減らすことでスタミナを温存し、怪我を防ぐことができる。腰の部分にある強力なアクチュエーターは、体力を温存したり、長い距離を歩く人向けの歩行補助を行うだけでなく、筋力トレーニングのためにあえて負荷を与えることもできる。2021年末には、Kickstarterで目標額の10倍を上回る資金調達に成功している。

自動車メーカーのホンダは、1986年からロボット開発に取り組み、2002年に最初の人型ロボットのASIMOを開発し、その研究で培った歩行理論をもとに歩行アシストデバイスも提供している。Honda歩行アシストは、モーター駆動によって下肢の振り出しと蹴り出しを補助することで、スムーズで効率的な歩行を支援しており、2015年に日本でリース販売を開始し2018年にはEUで医療機器認証を取得している。




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