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  • Toshi Akashi

Issue 140 - Era of Empathic Marketing

今回は「Era of Empathic Marketing」というタイトルのレポート紹介を通じて、コトラーのマーケティング理論の変遷を紐解きながら、共感的な企業になるにはどうすべきかについて考察していきます。また末尾に、今後の弊社が関連するウェビナーについてもご案内をしております。

 

マーケティング理論と聞いて、まずは「4P分析」を思い起こす人も多いかと思います。これはマーケティングミックスの代表的フレームワークの一つで、製品(Product)、価格(Price)、宣伝活動(Promotion)それに流通(Placement)という4つの要素を意識して、マーケティング戦略において各商品やサービスにとって最適な宣伝活動や流通を展開し、効果を最大化することにあります。


モダンマーケティングの父と呼ばれたフィリップ・コトラー氏が仲間の経済学者と共に編纂した「マーケティング・マネージメント」という書籍は現代マーケティングのバイブルとも呼ばれています。2006年に発行された第12版(最新版は15版)では、新しいマーケティングミックスのアプローチとして「ホリスティック・アプローチ」という理論を提唱して話題になりました。


この理論では、社内マーケティング(Internal Marketing)、統合型マーケティング(Integrated Marketing)、社会責任型マーケティング(Social Responsible Marketing)、それにリレーションシップマーケティング(Relationship Marketing)の4つの手法をバランスよく取り入れて包括的(ホリスティック)にマーケティングを考えるというアプローチです。違う言葉で説明すると体と心と環境は切り離すことができないので、統合的に取り組むということになります。


このホリスティック・マーケティングの考え方は、2010年にコトラー氏によってマーケティング3.0という言葉で再定義されました。 同氏は、「Marketing 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit」という著書の中で、マーケティングが商品(Product)中心の1.0の時代から、顧客(Customer)中心の2.0の時代を経て、価値(Value)を中心とした時代に変わったことを伝えており、著書のタイトルにもあるように商品やサービスがもたらす消費者の心の動きや精神性(Human Spirit)に焦点が移ったことを伝えています。


その後2016年に「Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital 」という著書を発表し、デジタルマーケティングの台頭について詳しく解説をしています。Webrainでは、2018年8月に「Era of Empathic Marketing」というタイトルで、このマーケティング手法の変遷を詳しく説明しました。


このレポートでWebrainが選んだEmpathicという言葉は「共感する」という意味の単語で、商品やサービスの提供者の意図に消費者が共感することが大切な時代に変わってきていることを紹介しています。ソーシャルメディアで「いいね!」の数を競ってきたのも、フォロワーが共感を示しエンゲージメントの度合いを測る一般的な指標と見られたからです。


またWebrainでは「Sales Tech: Data-enabled Trusted Engagement」というタイトルのレポートの中でも、Simon Sinek氏のThe Golden Circleと呼ばれる理論を引用し、セールス活動の中で「何を」「どう売るか」というWhat やHowではなく、「なぜ売るのか」というWhyの重要性を解説しました。このWhyは、「パーパス」、つまり存在意義にもつながります。


新型コロナのパンデミックにより、我々の生活や職場環境は大きく変わりました。まだデルタ株による影響は予断を許しませんが、アメリカでは水面下で「ポストコロナ」の時代へと動き始めています。この未曽有のパンデミックで人々が密に接することが極度に制限されたことで、逆に人々と触れ合うことがいかに大切かを再認識した方も多いと思いますが、その中で「共感」はますます大切な要素になってきていると思います。


さらに最近は環境問題も大きな注目を浴びるようになっており、企業も積極的に自社の活動をネットを使ってアピールするように変わってきています。みなさんは、グリーンウォッシュやSDGsウォッシュという言葉を聞いたことがあるでしょうか?これらは環境や社会に配慮しているように見せているが、その実態が伴っておらず、消費者に誤解を与えていることを示す言葉です。企業が実際にその配慮や行動を行っていなれけば、世間の厳しい目に晒され、ブランドごと淘汰されてしまう危険性を示しています。そう考えると、顧客からの信頼や共感を得るために語るべきストーリーはますます複雑になってきており、万人に対して常に「共感」を与え続けることが難しい時代に入ってきていると言えるでしょう。


今年の2月、コトラーの「Marketing 5.0: Technology for Humanity」という著書が発表されました。内容はマーケティング・オートメーションのためのAIからコンテクスト技術、そして顔認識と音声技術など、テクノロジーを用いた実例を幅広く並べた内容ですが、タイトルに人間らしさ(Humanity)を持ってきたことに、今の時代性を感じます。


ますます複雑化する世界の中でメッセージをしっかりと届けるためにも、各企業が自らのWhyやパーパスをポストコロナにあった形で見直し、顧客との感情的な接点を再構築していく必要があるのではないでしょうか?商品やサービスを通した人間らしさとはなにか?何が本当に心のこもった共感を得られる(Empathic)商品やサービスになるのかを、考える良いタイミングに来ているのではないかと思います。

 

<Empathic Marketingを支援するプレーヤー>

Vidyard の動画プラットフォームはマーケッター向けのサービスで、セールス活動の向上や売上げにつながるリード作成のために独自の動画コンテンツを作成することを支援している。同社は顧客の動画コンテンツを管理し、セールスファネル(潜在顧客を受注客に絞り込む手法)に基づいて視聴者にアプローチする。これを行うために、同社は動画をインタラクティブにし、視聴者にコンテンツのダウンロードやフォームの入力、メールアドレスの入力といった機能を提供している。このデータと適切なスコアリングはマーケッターのCRM データベースへと移行される。同社の顧客は動画コンテンツのエンゲージメントを高めることができ、動画の視聴を購買行動へと移すことができる。

Emarsys はAI プラットフォームを用いることで、人間にはできない速さでデータの分析や収集を行い、企業のマーケティング活動を支援する。統合された顧客プロファイルにはパーソナライズを可能にするための顧客のライフサイクルやウェブサイト上での行動履歴、CRM データ、購買データ、そしてオフラインデータが記録される。同社のマーケティングオートメーションは複数のチャネルに渡ったメッセージの配信を適切に行う支援を行う。そしてAI によるインセンティブ提案は、割引などのインセンティブをそれぞれの顧客ごとにカスタマイズし提供する。同社は2020年11月にSAPの子会社になっている。

広告技術企業Inuvo の製品であるIntentKey は、ビッグデータを用いて顧客の心理状況の分析を行い、顧客の意図の正確な分析を行う。同製品は5 億人以上の匿名ユーザーのプロファイルを毎日のウェブブラウジングデータに基づいて構築し充実させている。例えば、このシステムではバルセロナのホテルやスペイン行きの航空券といったコンセプトを作成し、そのコンセプトとの関連性を認識する。これらのコンセプトを集めて同社ではConceptGraph を生成し、ユーザーの目的(バルセロナへの旅行など)に対応させる。コンテクストベースの機械学習アルゴリズムを応用することで、同製品は匿名のカスタマーオーディエンス像を作成し、マーケッターは見落としがちのオーディエンスに対して確実に広告キャンペーンを配信することができる。




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