• ryee62

Issue 117: Innovative Education with AI Technology - Part 1

今回は、Innovative Education with AI Technologyというレポートの1回目の紹介になります。変化が著しい時代の中では、人々の非認知能力(ソフトスキル)の重要性はますます高まるばかりです。今後の教育やトレーニングは、テクノロジーを上手く取り入れながら、人間の非認知能力をいかに評価し、拡張していくかということが、重要な役割になっていくでしょう。


 

2016年にWorld Economic Forumは、「現在小学校に通う子供たちの65%は、未だ存在しない職種に将来就くだろう。」と発表して話題になりました。また、過去のSeattle Watchでも紹介しましたが、Dell Technologiesは2030年に人々が就くであろう職種の85%はまだ存在していないと2017年に発表しています。 https://www.forbes.com/sites/dereknewton/2018/07/26/what-mark-twain-didnt-really-tell-us-about-technology-disruption-jobs-and-education/#547b3c3842e2 https://www.huffingtonpost.ca/2017/07/14/85-of-jobs-that-will-exist-in-2030-haven-t-been-invented-yet-d_a_23030098/

これらは数年前の数字です。改めて見ると驚く人もいるかもしれませんが、例えばソーシャルメディアの管理者、Uberのドライバー、ユーチューバー、データサイエンティストと言った職種は15年前には存在していませんでした。皆さんが日常的に使っているLINEが有名になったのも僅か7年前のことです。同様にMcKinseyは、2030年までに現在の職種の30%がAIによって自動化され、世界で3億7,500万人の仕事が奪われると同じ時期の2017年に発表しており、Credit Suisseは同年、1950年代の大企業(S&P500銘柄企業)の寿命は約60年で、最近ではそれが20年以下に縮まってると分析しています。このような大きな時代の変化の中で、我々は教育やトレーニングをどのように捉えたら良いのでしょうか? https://www.mckinsey.com/featured-insights/future-of-work/jobs-lost-jobs-gained-what-the-future-of-work-will-mean-for-jobs-skills-and-wages https://www.cnbc.com/2017/08/24/technology-killing-off-corporations-average-lifespan-of-company-under-20-years.html

そこで我々が今回のレポートの中で注目したのが、認知能力と非認知能力の関係です。認知能力とは、数学や視覚・空間処理などの能力のことで、ハードスキルとも呼ばれています。これまでの伝統的な学校教育ではこの能力をベースに生徒の評価を行ってきました。しかし残念なことにコンピューターやAIは、この認知能力において人間よりも優れていることが分かってきています。一方、非認知能力(ソフトスキル)は、(人の心に宿る)モチベーション、努力、コミュニケーションや対人関係能力(ヒューマンスキル)、自己効力感(セルフ・エフィカシー:目標を達成できるという信念)などを指します。

William Arthur Ward氏はアメリカ生まれの有名な教育者であり著作家で、” The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires.” (平凡な教師はだたしゃべる。良い教師は説明する。優れた教師は体現する。そして、本当に偉大な教師は生徒の心に火をつける。)という言葉を残してます。まさにこれは教師の役目が非認知能力の育成であることを示唆しています。 https://www.passiton.com/inspirational-quotes/7757-the-mediocre-teacher-tells-the-good-teacher

また、企業文化の醸成の支援を行うThe Pontefract Groupの創設者でCEOのDan Pontefract氏は、まずは「人間の時代(human era:心の時代)」を確立してから「(コンピューターを駆使した)コグニティブな時代(cognitive era)」に進んでいくべきであると主張しています。そしてHamilton Project(Brookings Instituteが創設した経済成長のためのイニシアチブ)では、認知能力と非認知能力の両方に長けた社員は、より多くの収入を得られる傾向があると報告しています。 https://www.forbes.com/sites/danpontefract/2017/12/12/of-hearts-and-minds-and-the-cognitive-era/#647e84cf5ef8 https://www.hamiltonproject.org/charts/relationship_between_cognitive_or_noncognitive_skills

このように考えると、技術革新が著しい時代こそ人間の本質が問われる時代になり、人々の非認知能力をどのように評価し、それをどのように拡張して認知能力とのバランスを取るかが今後の教育やトレーニングの使命になると、今回のレポートの制作を通じて強く感じました。


 

<非認知能力を拡張するシステムを提供するプレーヤー>

ここで紹介するプレーヤーは、非認知能力を強化するためにテクノロジーを使用しています。ソフトスキルとも呼ばれるこのスキルは定量化が難しいですが、21世紀に欠かせないスキルであると言われています。

Cartedo (https://www.cartedo.com/)

Cartedoは、学生や専門家が未来に対する準備を行うことができる体験型学習プラットフォームを提供している。同社は、教育者や雇用主と提携することで、彼らが設計するリアルなプロジェクトに学生がCartedoのプラットフォームを介してアクセスできるようにしている。プロジェクトには、フォトジャーナリズム、持続可能な食料、アプリのデザイン、飢餓の撲滅、プラスチックの使用削減などが含まれている。学生は、発想力、批判的思考力、問題解決力、学習意欲、起業家精神、共感する力などの仕事に関連したスキルを身につけながら、プロジェクトへの参加を通じて学ぶことが期待されている。


Verizon Innovative Learning Schools (VILS) (https://verizon.digitalpromise.org/)

Verizonでは、Verizon Innovative Learning Schools (VILS)と呼ばれる教育プログラムを立ち上げている。非営利団体のDigital Promise と共同でVILSではプログラムに参加している学校の全ての⽣徒と教師にデバイスとモバイルインターネットのデータプランを提供している。このプランによって、STEM分野(科学、技術、エンジニアリング、数学)の教科の学習において、カスタマイズされた学習環境や協業環境の構築が可能になっている。VILSではプロジェクトベースの学習に重点が置かれ、⽣徒は⾃分の学習に対してオーナーシップと責任感を持ち、プログラムを通じて教師はファシリテーターという立場で⽣徒の学習を⽀援するよう設計されている。

Mindset Works (https://www.mindsetworks.com)

Mindset Worksは、すべての人々が継続的な学習と成長を実現できる世界をつくることを目標にしている。同社のCarol Dweck氏とLisa Blackwell氏による研究と、彼らの人々は自らの能力と知性を開発することができるという信念に基づいたグロース・マインドセットに関する製品の開発を専門としている。Growing Early Mindsets(GEM)と呼ばれる製品では、幼稚園前から小学3年生までの子どもに、マインドフルネスや集中力についてより自然な形で教えることができる。同製品は、読解力に基づいた社会的および感情的な学習(対人関係能力育成)に焦点を当てている。GEMでは、絵本の読み聞かせによって子どもに主要なコンセプトや考え方を教える手法を採用しており、短時間のミニレッスンを加えることで飽きない学びを提供している。

最新記事

すべて表示

Seattle Watch #158(こちら)では、次世代の分散型インターネットと呼ばれるWeb3について紹介しました。今回はWeb3に関連して、ブロックチェーン技術を活用したDAOと呼ばれる新しい組織の在り方について見ていきたいと思います。個人の働き方やイノベーションの創出が盛んに議論される中で、DAOは多くの示唆を与えてくれるように思います。 DAO(Decentralized Autonom

以前のSeattle Watch(Issue 157)では、「シアトルのビジネス近況(2022年前半)」と題して、シアトルを本拠地とする多くのテック企業について紹介しました。(その時の記事はこちらをご覧ください)今回のSeattle Watchでは、シアトルの社会や暮らしに注目して、なぜシアトルが住みたい街ランキングの常連になっているのかを掘り下げてみたいと思います。 本題に入る前に今回のSeat

今回のSeattle Watchでは、NASAが配備しているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡をテーマとして、宇宙開発が私たちの生活にもたらしている影響について考察していきます。宇宙開発で培われた技術は様々な産業に還元されて私たちの生活を支えており、短期的な経済利益のみならず、長期的に社会にもたらす価値を踏まえて見ていく必要があると思います。 2022年7月12日に、NASAは昨年配備されたジェームズ