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Issue 106: Consumer Empowered Digital Healthcare - Part 2

今回はConsumer Empowered Digital Healthcare(コンシューマー主導のデジタルヘルスケア)というレポートの後編です。コンシューマリズム(消費者主義)が進むヘルスケア産業において、テクノロジーは今後どのような役割を果たしていくのでしょうか?

 

前回のSeattle Watchでは、「Consumer Empowered Digital Healthcare」というレポートを紹介しました。私たちがこのレポートの中で特に伝えたかったことは、新しいテクノロジーが従来のヘルスケアにおける消費者の体験を根本的に変えつつあるという事実です。これまで長い間、医師はすべての医学的知識の中心的な存在であり、彼らがもつ知識やデータは慎重に管理された関係の中で、必要に応じて患者と共有されてきました。しかし今日では、患者がデータを自ら取得して使用する消費者となり、個人のヘルスケア体験の中心となってきています。 今後ますます、医師、病院そして医療サービスは、Eコマースで販売されている商品のように、患者によって調査、評価、そして選択されるようになるでしょう。さらに、他の士業と同じように医師であってもコモディティ化は始まっており、差別化の動きはますます強まるでしょう。だからといって、医師が不要になることはなく、私たちの健康維持にとって欠かせない存在であることは変わりありません。フィットビット・メディカルのディレクターであるJohn Moore氏は、「結局のところテクノロジーは我々のヘルスケアの悩みを解決するのではなく、人々が問題を解決するための手助けをするに過ぎない。」と述べています。 しかし、人々は本当にアマゾンで商品を買うように、医療サービスも買うようになるのでしょうか?。専門家にはそう考える人も出てきています。Ochsner Health SystemのCEOであるWarner Thomas氏は、「ヘルスケア業界では消費者主義がかなり進んでいる。否が応でもこの動きは今後も加速していくので、組織(病院など)はそれを受け入れる必要がある。」と述べています。Warner氏の意見を裏付けるように、ノースウエスタン大学のElena Prager教授の研究では、消費者はヘルスケアサービスを質と価格に基づいて意思決定したいと考えていることが明らかになっています。 https://insight.kellogg.northwestern.edu/article/will-people-price-shop-for-healthcare この大きな変化のカギを握るのは、ウェアラブルデバイスからIoMT(医療におけるモノのインターネット)に至るまでのテクノロジーで、これらは私たちが医療情報を収集、共有、活用する方法を変えようとしています。これまでのように病院に行って長時間かかる検査を受けなくても、必要なデータのいくつかは自分たちで収集できるようになってきています。精度の高いデータの収集には今後も一層の改善の余地がありますが、スマホやスマートウォッチを通して24時間365日生体情報が取得されることで、データに基づいた意思決定を行うための豊富な情報を提供することができます。そしてIoMTのさらなる普及は、患者と医療プロフェッショナルのデジタル上でのつながりを一層強化していくでしょう。 その結果、より低いリスクとより手頃なコストで、より良い治療が可能になっていくと考えられます。実際、デジタルヘルスケア市場は、2025年までに5,360億ドル(57兆円)規模になると予測されています。 https://thriveglobal.com/stories/9-most-important-trends-in-healthcare-technology-revolutionizing-patient-care-and-management/ 下記に、この消費者志向のヘルスケアの新しい動きに乗って事業を展開しているプレイヤーの一部を紹介します。

 

<消費者志向のヘルスケアのプレーヤー> Qardio (https://www.getqardio.com) QuardioCoreは、遺伝性の健康リスクがある人や、心臓発作、脳卒中、糖尿病などの経歴がある人のために開発された小型のウェアラブルデバイスである。ストラップで胸に装着し、皮膚温度、心拍数、活動量、呼吸データを取得し、これらのデータはすべて医師とリアルタイムで共有される。ユーザーは、24時間体制でモニタリングを受けながら、日常生活を送ることができる。 Sleepace (http://www.sleepace.com/) Sleepaceは、睡眠パターンをモニターするために開発されたRestOnと呼ばれるデバイスを提供している。睡眠の邪魔になる装着型のデバイスとは対照的に、RestOnはマットレスの上とシーツの下に敷くタイプのセンサーであり、ユーザーはベッドに横たわるだけで、睡眠時間、心拍数、体の動きなどのデータを取得することができる。これらのデータはスマホアプリに送信され、ユーザーが確認したり、医療専門家と共有することでアドバイスを受けたりすることができる。 Abbott Freestyle (https://www.freestylelibre.us/index.html) Abbott が開発しているFreestyle Libre は、糖尿病患者が血糖値を測定するための腕に張るパッチ型のセンサーである。同製品によって、患者は従来のように血液サンプルを1日に2回摂取する必要がなくなる。このパッチは、痛みのない小さな針を通して継続的にグルコースを測定する。血糖値を確認してそのデータを転送するには、専用の読み取りデバイスまたはスマホをパッチに近づけるだけで良い。測定値は、ユーザーとその医師がレビューできるようにスマホアプリに記録される。

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